しかし何よりこの曲が冬を感じさせるのは、白い息まじりできこえてきそうな冒頭の「会いたいな」のフレーズ。おお何という声を出すのだ、アッコちゃん。
街路樹も枯れ、通りにはまだだれもいない暗がりの午前5時台の街。まだ生命のないひっそりとしたところに、突如現れた人の気配にどきりとする。この歌の出だしに、そんな印象を受けた。冷たい空気の中、生命の気配は白い息という形で現れる。冬の空の下で見える、生きてるものが持つ温度の色。骨といっしょ。すべての生き物に共通の色。そしてすぐ消える。次々とまた一つ現れる。そこに生命がある限りだ。その点で、しろい息は、ひとりぼっちのとき取り止めもなく浮かぶ思い出と似ている。
「独り」ということを痛いくらいに(それこそ冬の外気みたいに)感じさせられる歌。この歌に満ちている「白」のイメージと結びついて、ますますそう思う。「白」って孤独が似合う色と思う。
雪の白、病院のシーツの白、人骨の白。ホットミルクの白、湯気の白、凍えた手のひらに吹きかける息の白。
孤独だが温かい歌。白という色が、死のイメージを内包しながらも、清潔で、時に温かい色だというのと似ているかもしれない。独りということが、冷たくて痛いのと同時に、なぜか平安をもたらすのと似ているかもしれない。独りをへた後には、ほんの少しの温かさが、心の底に宿るのと似ているかもしれない。人の体温と同じくらいの温かさだと言っておこう。
(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『OUI OUI』(1997)に収録)
10代20代ではあまりにもわかならすぎた私がおりました。
だから、昔のCDなど引っぱりだして聞くとしみじみと体に突き刺さります。
このたびの曲もホントにカナリヤバいです(大泣)
アッコちゃんの歌詞は「ああこういう意味だったのか」的な再発見をすることがホントに多いし、昔のアルバムを聴いてると、「わずか20代そこそこのとき、こんな歌詞が書けたんだ…」とか「今の私と同い年でこういう言葉が出てくるんだ!」とか、驚くことしきりです。これからもどんどんいい詞を書いてほしい…。
やのさんには少ないタイプの歌詞で
胸にさっくりきます。