2006年07月30日

「All The Bones Are White」

題名のbonesにwhite、「だきよせた私の肩に風が止まる」の歌詞、乾燥した冬の冷たさを連想する。白い熱いホットミルクがほしくなる。

しかし何よりこの曲が冬を感じさせるのは、白い息まじりできこえてきそうな冒頭の「会いたいな」のフレーズ。おお何という声を出すのだ、アッコちゃん。

街路樹も枯れ、通りにはまだだれもいない暗がりの午前5時台の街。まだ生命のないひっそりとしたところに、突如現れた人の気配にどきりとする。この歌の出だしに、そんな印象を受けた。冷たい空気の中、生命の気配は白い息という形で現れる。冬の空の下で見える、生きてるものが持つ温度の色。骨といっしょ。すべての生き物に共通の色。そしてすぐ消える。次々とまた一つ現れる。そこに生命がある限りだ。その点で、しろい息は、ひとりぼっちのとき取り止めもなく浮かぶ思い出と似ている。

「独り」ということを痛いくらいに(それこそ冬の外気みたいに)感じさせられる歌。この歌に満ちている「白」のイメージと結びついて、ますますそう思う。「白」って孤独が似合う色と思う。

雪の白、病院のシーツの白、人骨の白。ホットミルクの白、湯気の白、凍えた手のひらに吹きかける息の白。

孤独だが温かい歌。白という色が、死のイメージを内包しながらも、清潔で、時に温かい色だというのと似ているかもしれない。独りということが、冷たくて痛いのと同時に、なぜか平安をもたらすのと似ているかもしれない。独りをへた後には、ほんの少しの温かさが、心の底に宿るのと似ているかもしれない。人の体温と同じくらいの温かさだと言っておこう。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『OUI OUI』(1997)に収録)


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2006年07月23日

「ふりむけばカエル」

その夜、さえない気分を紛らわそうと、私はネットサーフィンに興じていた。しかし、とりたてて面白い情報にも出逢えず、溜め息まじりにパソコンの電源を切り、ふと携帯電話を見ると、一件の着信履歴が。ネットをしている間、カバンの中で鳴っていたらしい。それは蛙からであった。

アッコちゃんの「ふりむけばカエル」は、聴きながらあるいは口ずさみながら、つい歌詞を頭の中で映像化してしまう。イケてない自分に失望しがっかりうなだれていると、「どうにかなるさ」と背後から声が。ずいぶん下のほうから聞こえてくるその声。不審に思いながら振り返ると、足下にはとぼけた表情の小さなカエルが(私の中では、そのカエルは本物のアマガエルではなく、糸井重里さんがアッコちゃんのコンサートグッズのために描いた「さとがえる」だったりする)。がくっと脱力させられる、ゆる〜い情景。この曲のメロディーが持つハキハキはじけるような感じとはどこかミスマッチで、つい笑わされてしまうのだ。

何とはなしにゆーうつで、うっかり踏み誤るとクヨクヨ自分をかわいそうがってしまいそうになる瞬間、違う方向から声をかけてくれるカエルが背後にいてくれるときは幸運だ。小さなカエルの声を聞き逃さずに済んだときは幸運だ。

着歴の残ったケイタイを取り上げ、私は蛙に電話した。相変わらずバカな彼、それにバカな私。笑っているうちに夜は更けていった。そう、カエルに言われちゃ、どうしようもない。ほんと、笑って明日を迎えるしかないのだ。

(作詞:糸井重里 作曲:矢野顕子 アルバム『GRANOLA』(1987)に収録)
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2006年07月19日

「"It's For You"」

長年アッコちゃんファンをやっていると、「矢野顕子のどの曲が好き?」とよく訊かれるし、私も訊く。

この質問に答えるのが難しいのは、お気に入りを絞り込めないからだけではない。「有名どころから言っとくか」とか、相手によっては、その人が知っていそうな曲から選ぼうと計算してしまうせいもあると思う。あと、「この場合、インストで答えるのは不可だろうか」「歌詞のある曲を言っておいたほうが、歌詞の内容を介して私の価値観も伝わりやすく、私という人間も知ってもらえるかも」とか。余計なスケベ心が働きすぎるのだ。

その結果、いつも選にもれてしまうのがこの曲。ホントは大大好きなのに。

個人的には「ビーナス誕生」というイメージを持っている。水の中、小さな泡が次々と立ちのぼり、上からは光がたっぷり注いでいる。グラスに注がれたばかりのシャンパンみたいにキラキラ透明な感じ。そして、繊細なだけじゃ終わらないダイナミズム。溢れそう、こぼれそう、すっぽり飲み込まれ、いらないものを、洗い流してくれそうだ。

1年間の休業後に出たアルバム『WELCOME BACK』(1989)の第1曲目に収録されたこの曲。まっさらで力強いこの曲をリアルタイムで聴いたファンの人たちは、彼女の復帰をどんな気持ちで受け止めたのだろうか。

(作曲:Pat Metheny, Lyle Mays アルバム『WELCOME BACK』(1989)に収録)
posted by かなへ at 22:05| Comment(4) | TrackBack(0) | 楽曲レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

「I Sing」

慌しい日々。音楽を聴きたいなーと思うことも忘れ、しばらく過ごしていた。で、一区切りついた頃、繰り返し頭の中を巡ったのがこの曲だった。

ほかほかと温かい感じが心の中からわきあがるメロディー。落ち込み、疲れてしまっている人を励ますため私は歌うといった内容の歌詞。全体的に明るく前向きな雰囲気をたたえているが、その中に、どこにでもいる悩める人たちの悲哀がチラリと覗いている。その人たちに「Forget about…」「Don't worry about…」「My men, my women」と、呼びかけるような形で歌詞が書かれている。

自らも猫好きで、誰にも縛られない自由さをたたえたアッコちゃんではあるが、この曲はどことなく犬っぽい。落ち込んでいる人のそばに寄って、疑いのない瞳で人懐っこく笑いかけているような。その中に、自分の目の前の悲しい顔をした人を助けたいというまっすぐな意志。

自分のできることや自分の作るもので誰かを元気づけたいという気持ちが爽やかに力強く歌われていて、とても眩しい。この歌に強く惹かれる私であるが、私は励まされたいのだろうか、それとも励ましたいのだろうか。

(作詞:矢野顕子 作曲:坂本龍一 アルバム『ただいま。』(1981)に収録)
posted by かなへ at 19:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽曲レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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