2006年06月25日

「Pastorale(Pastoral)」

アッコちゃんのアルバムの中で、梅雨の季節が最もよく似合う(と勝手に認定)『ブロウチ』(1986)。いやなジメジメをふっとばせ! というよりはむしろ、雨の音やものうい空の色、濡れた道路の光やあじさいの色が特別な妖しさで迫ってくるように思え、ちょっと違う気分で雨の日を過ごせそう…そんなアルバムだと思う。

薄気味悪い感じの曲と、素直に美しい歌詞やメロディーのついた曲がだいたい半々の割合で収められているが、両者のちょうど中間に位置する印象のこの曲に、私は強く惹かれる。

牧歌という意味の題名がついたこの曲。アッコちゃんの伸びやかな高音は、たしかに草原を吹き抜ける風のようにスーッと気持ちいいが、一定のリズムを刻み、ときおり暗さがにじむ伴奏に、私は屋内の情景を想像した。誰もいない美術館をコツコツと足音を立てながら一人で歩くみたいな。人間やその他の動物とは異なる生命が静かにひしめく場所、そんな感じ。

(作曲:I. Stravinsky アルバム『ブロウチ』(1986)に収録)






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2006年06月18日

「行かないで」

改めてあなたのことが好きだと、一人で思った。
二人で共有する「好き」は、ぬくぬくと温かく、ただただ幸福だけれど、「好き」という思いに一人で向き合うときは、ほんの少し孤独で、ざわざわとした気持ちがする。でも、底のほうにかすかな明るい光。

歌の中に織り込まれている田んぼ道の風景は、私にとってはなじみ深いものだ。よく犬の散歩で歩いたから。夕暮れどきなどは、たまに高校生くらいのカップルを見かけた。二人きりになったり、一人きりで考えたりするときに、とても優しい場所なのであった。平べったくて隠れる場所はないのに、不思議と守られているような気がするのだ。

(作詞・作曲:矢野顕子、岸田繁 アルバム『ホントのきもち』(2004)に収録)
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2006年06月10日

「GIRLFRIENDS FOREVER」

明るいメロディーに「ポップコーン」「バニラアイスクリーム」「マシュマロ」なんて単語が乗っかっている。可愛らしい。それに、大好きな女友達がいる女性なら、おそらく理解は難しくない歌詞。初めて聴いたときからずっとお気に入りの曲だった。

でも、自分の年齢が29、30に入ったあたりから、この曲の聴こえ方が違ってきた。ゼリービーンズのようにカラフルな色彩が、ぱーっと広がるみたいな感じ。よりはっきりと、鮮やかな実感をもって入ってくるようになったのだ。

学生の頃は、そして友達に独身者が多かった頃は、女友達に気軽に会えたし話せた。他愛のない話を際限なく続け、笑顔ばかりあげたりもらったり。深刻な相談ごとをしていたはずが、気がつくと関係ない話に流れていて、問題は何ひとつ解決しちゃいないのに、少しだけ勇気が湧いていたり。でも、そういうのは、毎日の当たり前のひとコマだったのだ。

自分と友人のどちらにも、その他にすべきことが増えてしまった今、この曲を聴くと、離れていた友達と久しぶりに話す高揚が、わかりやすく飛び込んでくる。計算抜きで言いたいことを言える相手のいるありがたさを知るほど、この曲は色鮮やかになるのかもしれない。

ところで、この曲はアッコちゃんのライブでよく歌われる。そのたびに違った印象を受ける。歌う側の気持ちや、聴く側の気持ちで幾通りにも変化するからかなと思う。そこのところは、友情と少し似ているのかも。数年後、そして10年後の私は、この歌をどう聴いているのだろうか。楽しみなところである。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『GO GIRL』(1999)に収録)



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2006年06月04日

向かいのあっこちゃん

向かいの貸家にその一家が越してきて、半年ほど経つ。

その家族には小学生の兄妹がいて、お兄ちゃんは小学校高学年(声変わりはまだ)、妹は小学校2・3年生くらいと思われる。兄妹は、こげ茶色の私立の制服を着て、朝早くお母さんのBMWで駅まで送られている。近所の公立小学校に通っていないせいか、週末は兄妹だけで遊んでいることが多い。

妹のほうは家族から「あっこちゃん」と呼ばれていて、一人遊びが好きなようだ。お兄ちゃんがサイクリングに行ってしまったあとも、ホースから水が流れるのを眺めたり、お菓子のかけらを運ぶアリの行列を追いかけたりしているようだ(この間、お父さんがアリを踏んだと言って怒り狂っている声が部屋に聞こえた)。

あっこちゃんは、大きな声のお父さんやお母さんに「早くしなさい」とよく注意されている。家族が車で出かけるときは、いつもあっこちゃん待ち。兄弟の下の子の不敵さで、いくらせかされても動じる様子はない。でも、「おいてくよ」とお父さんから最後通告がなされると、抗議の声をあげながら大あわてで駆けてくる。

先日、夕方7時頃、外出先から帰ったら、うちの前に小さな人影があった。
あっこちゃんだった。わが家の門柱の明かりをたよりに立ったまま読書をしている最中だった。そうだ、私も子供の頃、外国が舞台の物語を読むときは、わざわざ応接間にこもっていた。シャンデリア風の照明器具、めったに使われることのないソファ、他の部屋と違うよそいき風なデザインのカーテンに囲まれると、物語の世界により集中できたのだ。外の明かりで本を読んでみたいという彼女の気持ちは、理屈じゃなくすぐに理解できた。よみがえってきたのだと思う。

邪魔をするのは気が引けたが、「こんばんは」と言って門扉を押すと、はっと顔をあげたあっこちゃんは、蚊のなくような声で「こんばんは」と返事をし、弾かれたように自分の家に飛び込んでしまった。あっこちゃんは、家族には結構口ごたえをするが、ものすごい内弁慶なのである。

あっこちゃんは今日も一人遊びに興じている。庭に生えている花の咲く雑草を摘んでいる。赤と白のしましまのワンピースがかわいらしい。まだ小さいのに眼鏡をかけているのは、やはり本好きなせいだろうか。





posted by かなへ at 11:28| Comment(0) | TrackBack(0) | 不器用貧乏暇なし日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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