2006年05月31日

「青い山脈」

若者がハイキングをしている歌。なのに、なぜか哀しげなメロディー。

おそらく一度は誰もが耳にしたことのあるこの曲をアッコちゃんがカバーすると、スリリングな感じが加わった。握った砂が、あっという間に指のすき間からすべり落ちるみたいな。草木が芽を出し背丈を伸ばし、樹木に成長するまでを一気に早回しのテープで見ているみたいな。後戻りは不可能、容赦のない速度だ。

古い上着を脱ぎ捨てて、振り返らずに前に進む。つかのまの青春を謳歌すべく、文字通り歌を歌いながら歩く。何に向かって声を張り上げているのかはわからないが、この瞬間を忘れたくない思いは本当。そんなふうにしているうちに、若い時間はあっという間に消えてしまう。

儚い、美しい、だけど力強い。

(作詞:西条八十 作曲:服部良一 アルバム『ごはんができたよ』(1980)に収録)


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「悩む人(A Worried Girl)」

「だけど悩む時間はたのしい」と、前奏なしで突如始まるこの曲。
いや、前奏はあるのかもしれない。冒頭の「だけど」という言い回しは、この結論に至るまでにぐるぐると悩んでいた様子を想像させる。メロディーなき前奏といったところか。

そして、終盤で「ここに悩む人」というフレーズが何度も繰り返し歌い上げられる。この曲を初めて聴いた高校時代、題名から自分のことが歌われているのかと期待しながら聴き始めたが、この軽やかさが腑に落ちなかったのを覚えている。悩む人についての歌が、なぜこうもノリノリなのか。思春期特有のドロドロの自己嫌悪にさいなまれ、それらに真正面から向き合ってはへとへとになっていた小娘には、まだ早かったんだろうと思う。

そんな小娘も、オトナになるにつれ、やり過ごすことを学ぶものらしい。悩みとは、完全に消え去るまで固執し続けるものではなく、何とか折り合いをつけながら、日々のすべきことと同時進行させるものなのだと感じ始める。この歌の歌詞に出てくる「ありあわせの答え」が意味することが、ようやく実感としてわかり始めたのかも。

それに、悩む人を何度もやっていると、自分の欠点や悩みと顔なじみになる。昔の日記を読み返して、「似たようなことばっか書いてんなぁ」と思う。成長がない? そうかもしれない。しかし、残念ながら、人の本質などというものは、そう簡単には変わらない。でも、代わりにテクニックは覚える。かわすこと、逃げること、やり返すこと、笑い飛ばすこと、そして何より赦すことをオトナは覚えるのだ。そんな風にして、悩みにぶつかると「今回もひとつコントロールしてやろうじゃないか」と、ほんの少しわくわくしてしまうのだ。で、結論として「だけどたのしい」なのかな、と思うのだ。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『WELCOME BACK』(1989)に収録)
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2006年05月29日

サシという人間関係

数ヶ月前から、ある漫画にハマっている。『ハチミツとクローバー』(羽海野チカ)。世間では高い人気を誇っているそうだが、私には関係ないと無視しつづけてきた作品だった。可愛いけど子供っぽい絵柄(登場人物は20代? ええ、これが!?)、おまけに作品には「全員片思い」というコピーが付いているらしい。…うーん、この作品は私以外のだれかにお任せしよう。などと思っていたのだが、職場の同僚が貸してくれるというので、好奇心半分に借りてみた。1日2冊を4日に分けて借りたのち(現在第8巻まで発売中)、自分のものにしておきたくなって、結局ブックオフで「大人買い」をしたのだった。

何が私をブックオフに向かわせたのか。私にとって『ハチクロ』の魅力は、大きく言えば2つある。

1つは、特に物語の前半に漂う無常感。私が一番好きなのは、第3巻に登場する2度目のクリスマス・パーティーの場面。大きなクリスマスケーキにかぶりつきながら、竹本が「これがみんなで過ごす最後のクリスマスになるだろう」と予感するところ。宴会のはかない楽しさ、酔っ払った頭で、かすかに終わりを予感する感じは、とても覚えがある。だからこそ、今そこにある人や出来事が愛おしく、しっかり覚えておこうと言い聞かせる感じなんて特に。物語の中で、竹本は学生同士でわいわいとくっついている今がずっとは続かないことを繰り返し感じ取っている。しかし一方で、彼には社会人になるということが実際にどういうものなのかは想像しきれていない。この時期を通り過ぎた人間が、この時期のさなかにいる人間をこれほどまでにまんまの大きさで描けるということに、はっとさせられた。

そして、もう一つの魅力は、群像劇でありながら、一対一の人間関係がじつに細やかに描かれている点だ。

はぐみ、竹本、森田、真山、山田、ローマイヤ先輩…この作品の登場人物は、たしかに面白く、愛すべき個性の持ち主だが、同程度の魅力をもつ登場人物は、別の群像劇にもあっさり存在するように思う。『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子)の真澄ちゃんだって、『20世紀少年』(浦沢直樹)の小泉だって。漫画に限らず、優れた群像劇において登場人物のキャラが立っていることは、さほど珍しいことではない気がする。しかし、『ハチクロ』では、それに加えて、登場人物の二人きりの場面が頻繁に描かれている。はぐみを想う竹本、はぐみと森田の共感、森田と山田、修司と理花の男女の友情、学科の先輩と後輩である真山と竹本の信頼関係、真山と修司の似たもの同士の友情…多様なサシの関係が見事に描き分けられられていて、何となくそこに信頼を覚える。

一対一で対話することには、照れとかリスクもつきまとう。相手のイヤな面に失望する恐れ、自分の手の内を読まれてしまう危険、弱いヤツだという評価を下されるかもしれない怖さ。そういうのを受け入れる覚悟のある人に許された楽しみかもしれないと思う。しかし、同時にそれは、話し相手を独占できる贅沢でもあり、相手が自分に時間を割いてくれるという贅沢でもある。そう、『ハチクロ』に流れる贅沢な時間に私は惹かれる。差し向かいの対話、一人きりの自転車の旅、作品の創作というキャンバスを前にした孤独な闘い…一人でひとつのものや人に向き合う時間。それは、忙しい日々を送っていると、ひとまず横においておく種類の時間である気がする。この作品には、そんな時間が随所に溢れているのだ。


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2006年05月28日

「にぎりめしとえりまき(THE RICEBALL AND THE MUFFLER)」

この歌のふわふわとした、あるのかないのか判らないようなメロディーがずっと気になっていた。粉雪みたいに、なかなか着地しない感じ。絵本を読んでもらっているような、昔話ふうの世界を感じさせる歌詞に合っている気もする。

さて、このメロディーがどこからやってきたのかを、先日私は突き止めた。
先週、4日ほどかけて青森を旅してきたのだが、電車や温泉で耳にする会話の中に(特にお年寄りのそれ)、あの一言一言確認しながら話しかけるような上向きの調子を認めたのだ。少しして、あ、「にぎりめしとえりまき」の喋り方だ!と思い至った。そう、この曲にはアッコちゃんの生まれ故郷の言葉、津軽弁のアクセントが閉じ込められていたのだった。

随分昔、大阪さとがえるコンサートでアッコちゃんがSMAPの『Hey Hey おおきに毎度あり』を歌ってくれたことがあった。上がったり下がったりする関西弁のアクセントをノリノリで歌っていたアッコちゃん。話し言葉と音楽の距離が近いのだ、とても。

(作詞:糸井重里 作曲:矢野顕子 アルバム『ELEPHANT HOTEL』(1994)、『TWILIGHT』(2000)に収録)
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2006年05月14日

漢字バトン

夢バトン、滋賀バトンの次は、漢字バトンというやつが回ってきました。
バトンとは、ネタに困って更新を滞らせたブロガーにとっては、たいへん便利なシロモノです。それに、何のかんの言って楽しいし。そんなわけで、早速始めます。

1.前の人が答えた漢字に対して自分が持つイメージは?
 「丸」:見た目上のことよりも、内面的なことを連想します。心のやわらかさ、朗らかさ。私にこのバトンを回してきた彼女のイメージと重なるかな。あと、吉田戦車氏の漫画に出てくる丸バナナを思い出しました。
 「志」:大好きな文字です。ピシッと立ってる感じが。「意志あるところに道は開ける」の「志」ですね。
 「慧」:少女漫画に出てくるヒロインの恋の相手役の名前にありそう。成績優秀、スポーツ万能、ドジなヒロインに恋するクールな二枚目。『のだめカンタービレ』(二ノ宮知子)の千秋様系。

2.次の人に回す言葉を3つ
 「思」、「歌」、「知」

3.大切にしたい言葉を3つ
 「心」:自分の感受性とか、人の気持ちとか。いろんなことに反応したり吸収したりできる柔らかな筋肉が欲しいな、と。
 「笑」:もしくはユーモア。
 「動」:「運動」の動というよりはむしろ、「流動」の動、「行動」の動です(スポーツにがて)。

4.漢字のことをどう思う?
 まず、単純にきれいだなーと思う。あと、もっと使いこなせるようになりたいなあと。

5.最後にあなたの好きな四字熟語を3つ教えてください。
 「唯一無二」、「天下無敵」、「泰然自若」
 特に「唯一無二」は、アッコちゃんの音楽を評するときによく使われる言葉です。これらの言葉のゆるぎない感じに憧れます。

6・バトンを回す人とその人をイメージする漢字
 管理Hさん 「声」
 やよひ姉さん 「花」
 MISUさん 「魅」(さきがけじゃなくて、魅ね)

 ちなみに私のイメージとして回ってきた感じは「求」でした。欲求不満の求!? 求人募集の求?? いやいや、探求の求ですよね(^^;) 貪欲なところを見抜かれていたのでしょうか。




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2006年05月10日

「HIGHLAND」

今日の昼間の蒸し暑さ。
なんだって、こんな日に当番はエアコンをつけないのだろう(うちの会社には、男性の週番以外はエアコンのスイッチをいじってはいけないという暗黙の掟がある)。おまけに繁忙期中には、外部からやってくる人も多く、私のいるフロアの人口密度は急増する。空気中には、もう誰のものだか判らないくらいに混じり合った体温とにおいがぺったりと横たわる。もう、そろそろ限界かな…。と、そこに天の助けのように、網戸を通ってしばし風が入る。小脇に置いたペットボトルの飲み物をぐいぐい飲む。

私たちの住む国とは比べ物にならない高温多湿を誇るThailandを歌った「HIGHLAND」。そういった国に流れているであろう、とろーんとした濃い空気がうまく閉じ込められている。それに、頭がボーっとする暑い昼間にたくさん汗をかきながら眠る気持ちよさも。あと、初めて訪れる国に対する新鮮な驚きがピョコピョコ覗いている気がする。私は旅が好きなので、そんなところも好き。

さて、網戸からやってきた風は止み、再びとろーんとした空気がオフィスに居座る。南の島、と社内で呼ばれているフロア南側のデスクの一角から、先輩の女性がバイトの男の子を叱る威勢のいい声がする。東南アジアの街の魚屋さんって、あんな感じだろうか。今日のような日に、急ぎの仕事がないのは不運だ。困る。集中できない。明日はも少し忙しいほうがいいな。というか、せめて午後からだけでもエアコンがつくといいな。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『オーエス オーエス』(1984)に収録)
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2006年05月07日

「Good Guy」

穏やかかつラブラブな歌詞に、少し意外なメロディーがついている。私にとってこの歌はそういう印象だった。海の底のような、広いけど薄暗い場所で歌われている、そんなメロディー。

恋とは、愛とは、もっと光に満ちていて、うきうきするものなのだと思っていた。5月の晴れた日の芝生みたいに、明るくて平らで走り出したくなるような。

だけど、「固くなった不安も やわらかく」して、「私を強くする」笑顔や言葉が、静かで薄暗いところに漂っているのかも、ということに、いつの間にか違和感を抱かなくなっていた。不安定な心が落ち着きを取り戻す温度と湿度。しっとりとした紺色の気配。この曲で歌われる「あなた」は、いいときばかりじゃなく、オチてるときやイケてないときも、じっと側にいてくれそうな気がするのだ。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『reverb』(2002)に収録)
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2006年05月06日

「David」

よく晴れた海のそばの街、見晴らしのいい丘、自転車、心地よい風。感じのいいものばかりを連想させる晴れやかなメロディー。とても肯定的。久しぶりに会う大好きな友人に向ける笑顔のように嘘のない、まっすぐな。

一方で、落ち込む友の肩を抱くような、細やかでやさしい肯定も感じられる。うまい言葉を懸命に探しながら、自分のことを話す相手を小さなテーブルの向こうから見守るような。相槌などを打ちながら。

よく笑いよく泣く、心の素直な私の友達。尽きないお喋り、飲み物、いい大人二人の馬鹿笑い、飾らない言葉によるホンモノの励まし。それは友情という名の、愛情。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『峠のわが家』(1986)、『Hitotsudake the very best of Akiko Yano』(1996)に収録)
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2006年05月04日

矢野顕子版・アニマル・インデックス@

アッコちゃんの歌には様々な動物が登場します。生き物が大好きな私にとって、そのへんもかなりポイントが高い。そう言えば、アルバムのジャケット写真でもアッコちゃんが動物と撮った写真を結構見るような…。いったいどれだけ動物が登場するのでしょうか。以前から気になっていた疑問を確かめるべく、現在所有しているアルバムで早速試してみます。まずはアルバムのジャケット及び歌詞カードの写真・イラストから。

いろはにこんぺいとう』(1977)
プラスチックのイルカをガニマタでかつぐアッコちゃんがいかしてます。

ト・キ・メ・キ』(1978)
コロボックルで有名な佐藤さとる氏のイラスト。私は子供の頃、この人の絵は悲しげでこわくて苦手でした。彼特有の煮しめたような色調のせいかな。でも、今見ると、このジャケットかなり好きです。猫、犬、鳥、蛙、ちょうちょ、蛾、いもむし、きりん、象、カメムシ、しまうま、象、かたつむり、アリ、ゴキブリ、蚊、ふくろう…色んな生き物が描かれています。このアルバムのタイトルにもなっている名曲「ト・キ・メ・キ」の歌詞をヒントに描かれたのでしょうか。

ごはんができたよ』(1980)
歌詞カードの背表紙には、タヌキ(あらいぐま?)のしっぽをつけたアッコちゃんの後ろ姿。こちらもガニマタで写ってます。

愛がなくちゃね』(1982)
草をはむ大きな茶色の牛と和服姿のアッコちゃん。このジャケット写真、大好き。ちなみに歌詞カード中の写真では、2頭の象にはさまれて、これまた和服姿で写ってます。嬉しそう。

ELEPHANT HOTEL』(1994)
黒のラブラドル・レトリバーと一緒に。

Hitotsudake the very best of Akiko Yano』(1996)
初回限定の紙のパッケージには、うさぎ耳と鼻をつけたアッコちゃん。ガーリー。

Oui Oui』(1999)
こちらも初回限定の紙パッケージにアッコちゃんの愛猫タビとマイケルが。
歌詞カードには、アッコちゃんに抱きしめられたタビ、パッケージの裏側には、アッコちゃんにほおずりされて、何とも微妙な表情のマイケルの写真。猫独特の憎らしい表情が可愛い(マイケルは、アッコちゃんのオフィシャル・ページに掲載されている日記の最新記事にも写真で登場してますね)。カフェオレ色のCDレーベルにも2匹の写真。

ホントのきもち』(2004)と「PRESTO」(シングル版)(2006)
どちらもAtsuki Kikuchi氏(どういう漢字を書くのか未確認です。すいません)のイラスト。『ホントのきもち』は鳥、「PRESTO」は馬。『ホントのきもち』の鳥は「PRESTO」のビデオクリップにも登場。どちらも何を考えているのかが見えない、アンニュイな感じが魅力。

今回は、ジャケット+歌詞カード編。楽曲編もやりたいです。…動物の歌多いから、大変だろうなぁ(^^;)





posted by かなへ at 20:49| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤノアキコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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