2006年03月27日

「HOW CAN I BE SURE」

話がはずむ、いい声をしている、他の人と楽しそうにしている所を見ると、少し胸が痛い…
これらの気持ちに「その人に恋をしているのだ」と、初めて言葉を与えたときの高揚、「好きだ」と自覚したときの勇気が出る感じ、その状態にまだ慣れてなくて、嬉しげに何度も振り返る感じ…新しいランドセルをしょって、入学の日を待つ子供みたいに。初恋に限ったことじゃない。それはテレビドラマを見てもわかるだろう。この瞬間は、いくつになっても平等に訪れる。

それから、そのあと。熱を上げると、飴煮の恋に徐々に焦げ色がつく。あの人は私をどう思っているのか、私よりあの子が好きなんじゃないのか、動き出したばかりのこの気持ちが、誰かにバレてしまったらどうしよう。身を焦がすほどに、甘い味とほろにがい味が交互に迫ってくる。

アッコちゃんのこの歌、歌詞カードを見る前から、そういう恋の歌だってわかった。好き、好き、好き!って気持ち、自分でもコントロールしかねる気持ちを歌いきった。天井知らずの歌声で。甘い! だけど力強い。じっくり煮込んだあめ色のりんご(もちろん青森産)がのっかった、タルトタタンのような歌声なのだ。

(作詞・作曲:Felix Cavaliere, Eddie Brigati アルバム『SUPER FOLK SONG』(1992)、『ピヤノアキコ。〜the best of solo piano songs〜』(2003)


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2006年03月25日

「おいしい生活」

たたみいわし ひざまくら…
自分をチョッピリ嬉しい気持ちにさせる単語でできた歌詞。これらで満たされて、おいしい生活ができあがる。
で、この歌のあとには、私のおいしい生活には何が必要か考えてみたくなる。
神戸の夜景と生ビールは入れたいな。この曲の歌詞にあるたたみいわしは入れないだろうな、ピンクの色紙や新しいシャツ…うん、これはわかる。
百人に百色のおいしい生活。いろんな人のが見てみたい。

(作詞:糸井重里・矢野顕子 作曲:矢野顕子 アルバム『愛がなくちゃね』(1986)に収録)
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滋賀バトン

だいぶ前にやった「夢バトン」に引き続き、「滋賀バトン」とやらが回ってきました(^^;) 滋賀県出身者に回すみたい。ちょっと長いんで、質問数を少し絞ってやってみます。

●なんといっても、最大の自慢は琵琶湖である
→琵琶湖以外にも、滋賀県立美術館+図書館(森林浴ができちゃうほど緑豊かです)、近江米、近江牛、大中牛、鮒寿司、信楽焼、愛東マーガレット(←激安ピチピチ野菜を販売している道の駅)…

●琵琶湖にブラックバスとブルーギルを放ったヤツを心から恨んでいる。
→ある魚が増えることで、ある魚が減り、ある魚が減ることで、ある植物が増え、ある植物が増えることで、ある被害が増え…しかも、湖は他府県の川とつながってる。生態系に及ぼす影響って、見えないところで後世に残ると思うし、笑い事では済まないぞと思う。ところで、とある農業高校では、ブラックバスを魚醤(ナンプラー)に加工したのだそうです。タイ料理大好きな私としては気になります。

●東海地方と近畿地方と北陸地方の境目にあり、「忘れられた近畿地方」とか「なんちゃって近畿」とか言われるのが悔しい。
→近畿の水がめ琵琶湖があるのになぜ忘れられるのか、不思議で仕方がない。

●世界最大級の観覧車「イーゴス108」は「スゴーイ」をひっくりかえしただけのネーミングに恥ずかしさも感じてた。
→この観覧車ができたのは、私の記憶が確かならば、1991年か92年だったかと思います。アッコちゃんのアルバムで言うと、『LOVE LIFE』、『SUPER FOLK SONG』が出た年あたりですね。観覧車の名前は一般公募で決められ、実は私も応募しました。…当時『ちびまる子ちゃん』ブームだったので、「夢まる湖(こ)」と。…ああ笑いたければ笑うがいいさ。

●北のほうはよく雪が降るので信号機が縦になっており南の人はきまってそれに感動する
→いや別に…。

●湖岸にお気に入りの喫茶店が一つはある!
→滋賀県の人は、「湖畔」ではなく「湖岸」って言うんですよね。私の中で、湖岸はラブホテルのイメージ(^^;) 家族でドライブに出かけたとき、無邪気に「お母さん、あれ何?」と尋ね、沈黙させた思い出が。

●黒沢年雄のことを「オウミ住宅CMの人」と認識している。
→そんなことはない。黒澤優ちゃんのお父さんでしょ(←それは黒澤久雄さんだそうです。ゲストの方より訂正が入りました)。このCMは他府県の人に馬鹿にされる。「ビワコホーム」のCMも結構強烈。

●BBCとは、英国放送協会ではなく、当然「びわこ放送」である。
→Biwako Broad Casting の略なんですよね。英語の教科書に「BBC」って出てきたとき、「あの放送の何がすごくてそれほど有名なんだろう?」って首をかしげました…2年ほど。1年で気付けという話ですね。

●浜大津からミシガンショーボートかビアンカに乗ったことがある。
→「ミシガン」及び「ビアンカ」とは、外国の豪華客船を模した船で(ビアンカの方が豪華)、琵琶湖を周遊します。春頃になるとNHKの朝ドラのヒロインがこれに乗って、「湖びらき」なんつって、大きい金色の鍵(に似せた発砲スチロール)を湖に投げ入れてます。で、ミシガンorビアンカですが、私は乗ったことありません。

●子どもの頃「うみのこ」に乗って他の町の生徒と野外体験学習したことがある。
→滋賀県の小学5年生にとって「うみのこ」は一大イベントです。一泊二日で他校の生徒と同じ船(「うみのこ」はその船の名前)にお泊りして交友を暖めつつ、琵琶湖や滋賀県の文化について学ぶという素晴らしい企画です。私はいまだにうみのこ周航歌が歌えます。

●買い物といえば、なんといってもハトのマークの平和堂だ
→JR各駅前にあるんちゃうかという勢いですからね。

●最近気になる滋賀の名所
→雄琴温泉。

●次にバトンを回す滋賀人
→当ブログに来てくださる方に滋ガール・滋ボーイも多くいらっしゃいますが、断りもなく出身地をバラすのもアレですんで、こちらからは指名しません。我こそはと思う方、どうぞ。
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2006年03月23日

はなうたdeアッコちゃん

アッコちゃんの楽曲を愛する人たちに、前々から聞いてみたいなあと思っていたことがあります。ズバリ、よく口ずさむアッコちゃんの歌は何ですか? 私に関して言えば、必ずしも「一番好きな曲」が「一番よく歌う曲」ではないような。こんなベスト3になりました。

1あなたには言えない
(作詞:宮沢和史、矢野顕子 作曲:矢野顕子 『LOVE IS HERE』(1993)に収録)
 残業して、暗い道を一人で帰るとき、つい無意識に出てしまうのがこの歌。「こ〜の〜悲しみ、誰に〜伝えよう」。曲のテンポが、会社帰りの私の歩くテンポに合うんです。

2ふりむけばカエル
(作詞:糸井重里、作曲:矢野顕子 『GRANOLA』(1987)に収録)
 小さな失敗にしょんぼりしていると、「どうにかなるさ」と声をかけられ、振り向けばそれはカエルで、「カエルに言われちゃしょうがない」と笑いとばす…という歌詞。イライラorくよくよは、歌って笑っておいしいものを食べて飲んで忘れるのが一番だなあって思いますね。

…と、いくぶん悩み多そうなチョイスになっちゃいました(^_^;) 選ぶ歌に無意識が反映されるのでしょうか!? いやいや、歌いやすさって側面もあると思います。

明るい歌も歌いますよ。

3OH DAD
(作詞:菊池真美、矢野顕子 作曲:大貫妙子 『ELEPHANT HOTEL』(1994)に収録)
 私が歌うことのできる数少ない英語の歌。高校を卒業したての頃、頑張って(?)覚えました。ポイントは、何と言っても歌詞のわかりやすさです。英語を勉強して十数年が経ちますが、未だに英語の歌詞って難しいなあと思う私(とほほ)。主語は省略されてるし、倒置もあるし、「この理解でいいんだろうか?」と悩むこともしばしば。けど、この曲はメロディーも歌詞も素直で、すうっと入ってくる気持ちよさが好きです。

ちなみに高校生の頃に好んで口ずさんでいたのは「SUPER FOLK SONG」(作詞:糸井重里 作曲:矢野顕子 『SUPER FOLK SONG』(1992)に収録)と「釣りに行こう」(作詞・作曲:宮沢和史 『LOVE LIFE』(1991)収録)。物語を読んでいるような気分にさせられる歌ですよね。

というわけで、皆さんの鼻唄の定番もお聞かせいただけると嬉しいです♪
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2006年03月21日

「終りの季節」

糸井重里さん作詞のアッコちゃんの歌というのは、すぐにわかる。難しくないけれど、入念に選ばれたのであろう秀逸なことばが「ぼくはここだよ」とピカピカ輝いているからだ。男子生徒からも女子生徒からも、そして先生からも愛されるさっぱりした気性の優等生みたいだなあと思う。

細野晴臣さん作詞・作曲のアッコちゃんの歌が、私は未だにすぐわからない。アルバムを聴き始める最初のうちは、ひっそり息をひそめて奥底のほうに沈んでいる。それが、アルバムを聴き込むうちに、ゆらゆらと浮上し始める。

そしてある日、いつものようにそのCDを聴く私の耳に、細野さんの曲や歌詞は、突然飛び込んでくる。「うわあ、いいなコレ!! …ええと、何て曲だっけ?」 このようにして歌詞カードで確認すると、たいてい目にするのは「細野晴臣」の文字。そうか、またこの人か。…声も小さくて目立たないし、何を考えているのかいまひとつ判らないのに、なぜか女子に人気のある男子生徒みたいだな、と思う。アッコちゃんは、糸井君とも細野君とも仲良くしながら、不思議と女子生徒の嫉妬は買わず、むしろ一目置かれてしまっている、不良だけど勉強はできる女子みたいだ(先生にとってはやりづらいだろうな)。

この曲も、「恋は桃色」も無風状態」も「相合傘」も、細野氏の曲には不思議な清潔感がある。ある種の潔さとでも言おうか。この曲の歌詞「それに救われる気持ち」というフレーズがやけに説得力を持つのは、そのせいかなと思う。

(アルバム『オーエス オーエス』(1986)に収録)

恋は桃色」:『PIANO NIGHTLY』(1995)、『ピヤノアキコ。〜the best of solo piano songs〜』(2003)に収録

無風状態」:『GRANOLA』(1987)、『Hitotsudake the very best of Akiko Yano』(1996)に収録

相合傘」:『いろはにこんぺいとう』(1977)、『YOHJI YAMAMOTO COLLECTION MUSIC THE SHOW Vol.3』(1995)、『ピヤノアキコ』に収録
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2006年03月19日

「LOVE IS」

友達の結婚式で何べんも聞いた「愛は寛容であり、愛は情け深い…」という聖書の文句。この英訳にアッコちゃんが曲をつけた。一言一言かみしめるような、繰り返しからなるメロディー。あるいは、山道を上るようなメロディーかなと思う。一歩ずつゆっくりと、頂上に近づいていく感じ。

そして、途中のあたりから、徐々に見晴らしがよくなってくる。曲の締めの部分、"LOVE NEVER FAILS"のフレーズのところは、頂上から下に広がる景色を見おろし、「世の中はなんてきれいなんだろう」と感嘆しているように聞こえる。そして、美しい世界には、やっぱり愛がなくちゃね、と思うんである。

(詞:「コリント人への第一の手紙」13章4〜8節より 作曲:矢野顕子 アルバム『LOVE IS HERE』(1993)に収録)
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2006年03月15日

「PIPOCA」

大人同士の気軽なパーティーか、懐かしい友人との長電話か。仕事の休みをとって、天気のいい平日に街歩きをしているところって感じもする。いろんな楽器の音がフルーツポンチのように集まった明るい音色。チューバやトロンボーンの音が入ってるところも好き。アッコちゃんのアルバムで、木管楽器が参加しているものはそれほど多くない。なんでだろう、いいのに。これからもっと増えないかな。

ところで、私にとってこの曲が収録されているアルバム『ELEPHANT HOTEL』(1994)は、思い出深い一枚だ。それまでの数年間に出たアッコちゃんのアルバムは、同じ高校の友人から借りていた。しかし、卒業後、彼女たちと違う進路を歩むことになり、私はアッコちゃんのアルバムを自分で買い始めた。新しいアルバムが出ても、すぐ感想を分かち合える相手もなく、何だか淋しい気持ちだった。おまけに宅浪+仮面浪人中だったし。その頃の気分がしみこんでいるせいだろうか、このアルバム全体にゆきわたる、丸く明るいあたたかさには、一抹のはかなさが秘められているように思う。

この「PIPOCA」も、パーティーが終わり、みんなが帰ってしまった部屋、電話を終えてソファから腰をあげるときの気持ちの切り替わりに似た気配が曲の終わりに潜んでいる。祭のあとには、再び自立した自分の生活。でも、それはいやなことじゃない。木管楽器の丸い音がそう言ってる気がする。どうにも淋しくなった頃、また集まればいいじゃないかと肩を叩いてくれた気がする。

(作曲:Hermeto Pascoal アルバム『ELEPHANT HOTEL』に収録)
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2006年03月14日

色とりどりのマイナスイオン

先日知人と美術館に出かけた。知人のかつての教え子が通う美大の卒業制作展を見に行ったのだ。
美術館の全館が貸し切られた大規模なもので、すべてを見て回ることはしなかったが、それでも結構見ごたえがあった。プロではない人の作品展、それも若者の、しかも作品にオーラのある人から単に器用な人まで、いろんなレベルの作品がぎっしり集まった展覧会は予想以上に面白かった。お金を払って見る企画展とは違う旨味。

美術の成績がふるわなかった私から見ると、どの人も上手い。でも、「スゴイっ」て人の作品は、もう一枚上手。その人なりのたたずまいがちゃんとある。大学4年生といえば20代前半、その頃の私は、今と同じように文章を書くのが好きだったが、自分の文体以前に、何かものを考えるにしても、自分のスキなもの(既に誰かが作り出した中から選んだそれ)をなぞるので精一杯だったように思う(…などと過去形にしてしまうのはあまりにも危険だ)。すごい、すごい! そのまま面白いものを作り続けてほしいなと思う。

優秀な作品ばかりでなく、現時点では参加賞かな? といった作品にもわくわくさせてもらった。自分がカッコいいと思うところから見せ方を借りながらではあるものの、「私、モノを作ってるねん!」みたいな自意識、「作ったから見て! 何なら好きになって!」という野心。くすぐったいけれどなんだか気持ちがいい。会場を出た頃には、山でマイナスイオンを浴びまくったような爽快感があった。そして、私もブログを続けよう、と思った。そんなわけで、京都造形大の若者たちよ、ありがとう。卒業おめでとう。
posted by かなへ at 22:37| Comment(7) | TrackBack(0) | 不器用貧乏暇なし日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年03月12日

ニューアルバムができたよ

アッコちゃんが素晴らしいニューアルバムを出しました!!
アルバム名は『はじめてのやのあきこ』。収録曲は7曲と少なめですが、そのうち6曲は、アッコちゃんがこれまでの名曲をゲストのミュージシャンの方々と一緒に歌うという企画。アッコちゃんはもちろんのこと、豪華ゲストの皆さんの軽々とした大物ぶりに度肝を抜かれる1枚です。何だかじっとしていられず、アルバムのレビューを書いてみることにしました。

1「自転車でおいで」 ゲスト:槙原敬之さん
アッコちゃんと佐野元春さんが歌ったこの曲が春風なら、この「自転車でおいで」は秋風のような感じ。出だしの和音が、アッコちゃんの歌には珍しい感じで、少し驚いた。淡いオレンジ色の音。またこの音が槙原さんの柔らかで幅のある声によく合うのだ。槙原敬之さんと言えば、彼が出したアルバムに収録されていた「ごはんができたよ」のカバーはほんとに良かった。炊きたてのご飯の白い湯気のような声。

2「中央線」 ゲスト:小田和正さん
今まで、小田和正さんの声は純度が高すぎる気がして、ちょっと近寄りがたく感じていた。
けれど、この曲を聴いて、まず最初になんて優しくギターを弾く人なんだろうとびっくりさせられた。イントロのピアノとギターの重なり、ほんとうに電車がガタゴト走る音みたいだった。電車の音に誘われて過去を思い返す場面が、映画のように立ち上がってきた。おまけに腰砕けになりそうなほど美しい、透明だけどつややかで丸い声。小田さん苦手なんて思ってごめんなさい。アッコちゃんがあなたと歌ったこの曲が、このアルバムでいちばん好きです。

3「PRESTO」 アッコちゃんソロ
アッコちゃんの純情をみごとに引き出した岸田繁さん(すごいよシゲルさん!)。シングル版の色んな音が入って瑞々しさ全開の「PRESTO」もいいけど、このピアノソロの、まだ誰にも知られていない生まれたての気持ちをこっそりいつくしむ感じも、違った瑞々しさがあって素敵。今さらながら、アッコちゃんのファンをやっていてお得な点は、1曲で何粒も美味しいところなんだよねえと改めて思った。

4「ごはんができたよ」 ゲスト:YUKIさん
全7曲のこのアルバムのちょうど真ん中にこの曲は置かれている。いい位置だなあと思う。男性ゲストとの共演、男性的な上原ひろみさんのピアノ、ほんの少しの緊張感とともに耳をすましてしまうアッコちゃんのソロの間に、ホイッと投げてよこされるかのようにこの曲が軽やかに飛び込んでくる。YUKIさんがアッコちゃんの曲をよく聴いてきた人なんだということは、この曲を聴くとよくわかる。アッコちゃんのリズムが、アッコちゃんの声の強弱が見事なくらい彼女に染み込んでいる。

5「架空の星座」 ゲスト:井上陽水さん
井上陽水さんの歌は、飄々としながらぬめりけがある。アッコちゃんの歌は、自由奔放かつエモーショナルなようでいて、いつもかすかに一点の乾きがある。ぬめりけと乾き、悠々と大人な二人の夢の競演。おおきなおおきな紺色の夜空。手足を投げ出して眠る、いいかんじに沈むベッド。

6「ひとつだけ」 ゲスト:忌野清志郎さん
今度のアルバムでアッコちゃんがキヨシローさんとこの曲を歌うと知ったとき、ぎゅんぎゅんロックしている「ひとつだけ」が聴けるのかと予想していたが、このアルバムに収められていたのは、テンポを落としてピアノ伴奏で歌われていたそれだった。この曲のメロディー(特に前奏)の美しさがよく伝わるテンポだと思う。すごい。たえず小刻みに揺れながら、歌の世界をまっすぐに伝えてくる清志郎さんの声が私は大好き。そして、この歌を歌っているときのアッコちゃんはやはり特別という気がする。

7「そこのアイロンに告ぐ」 ゲスト:上原ひろみさん
2台のピアノが2台のアイロンになって、アッという間にカンカンに温度を上げる。2台のピアノが黒い炎をあげ、私をペロリと呑み込む。2台の黒のスポーツカーになって、後ろからぐいぐいあおってくる。この曲からは何かが出ている。麻薬的な恐ろしい物質が。


ところで、今回のアルバムを聴いて、小学校のとき、音楽室のグランドピアノの中を覗き込んだことを思い出した。ピアノの音はガラスのようにキラキラしているのに、中には小さな長方形の木がいっぱい入っていることが驚きだった。しかし、今回このアルバムを聴いて、そのことに強く納得してしまった。ピアノの音に木のぬくもりがある。樽の匂いのしみこんだウイスキー味。ぬるめのお湯にゆっくりつかっているような。
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2006年03月06日

「おおパリ」

スーパーで買い物をするとき、歩いているとき、通勤電車に揺られているとき、お気に入りの曲を頭の中で気ままに再生することは、誰にでもあると思う。

私は仕事中に「おおパリ」を再生するのだけはやめようと、いつも気をつけている。好きすぎて、再生したら最後、曲の始めから終わりまで忠実に再現しなければ気がすまず、その間何も手につかないからである(また、短い曲なだけに、それができてしまう気がするのが、この曲のやっかいなところである)。記憶の曖昧な部分を適当にスキップしたり、好きなところだけ繰り返して仕事のお供にしたりすることを、このピアノの旋律は許さない。

前奏のピンと背筋が伸びるような整ったピアノの音、
ペダルが踏まれるたび、黄金色の輝きが加わるところ、
高熱にうかされ、あぶなっかしい足どりで巡る興奮、うるんだ瞳に映る街の灯りのきらめきを美しく表現する歌声、
びっしり詰まった和音でピタリと着地するラスト、

そんなわけで、「おお矢野顕子」な一曲なのである。

(作詞:イッセー尾形 作曲:矢野顕子 アルバム『SUPER FOLK SONG』(1992)に収録)

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2006年03月05日

「電話線」

複数のアルバムにこの曲は収録されている。『ピヤノアキコ』に収録された「電話線」が最近のお気に入りだ。

糸電話のような、ほそーくピンと張られた糸の上を、ものすごい情報量の旋律がキラキラと高速で走り抜ける。CDなんだから、何度も繰り返して聞けるはずなのに、聞き漏らすまいといった緊張感を抱かずにはいられない。すみれ色の湖、アネモネ色の光、花びらのようにかき集められる舞い落ちた涙、くちなしの香り、春を思わせるはかない単語がちりばめられている。

昔、書道の師範免状を持っている友人に、筆文字をかっこよく書くコツを尋ねたことがある。「きれいに書こうとして、ちまちまやると失敗する。多少汚くてもいい位の気持ちで、集中してガーッと書くこと。勢いが大事やねん」とのことだった。この曲は、アッコちゃんの「集中してガーッと」といった部分が男前なほどに発揮されている。だけど繊細。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『JAPANESE GIRL』(1976)、『Hitotsudake the very best of Akiko Yano』(1996)、『ピヤノアキコ。〜the best of solo piano songs〜』(2002)に収録)
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2006年03月01日

「きょうのわたくし」

三拍子のリズムで回るのは、自己嫌悪の気持ち。落ち込んでいると、どうしてこう壊れたレコードみたいに同じところを回ってしまうのか。テレビのコマーシャルで見た洗濯機の水の中を回るYシャツのように頼りない私。突然のハプニングに、自分の感情の波に翻弄されている。

この曲は、くよくよ自分を責めながらも、同時にそれを見つめる醒めた視線があるように思えてならない。息を止めて沈んでいくけど、目はしっかりと開いている。どうせなら底の景色も見といてやろうと。

メリーゴーラウンドのようにぐるぐる円環するメロディーをすっぱり断ち切るように、潔くこの曲は終わる。暗い部屋の扉をパッと開けるように、水面から顔を上げるように。

きょうのわたくし」というタイトルについて改めて考えてみた。初めて聴いたときは、前半で歌われている落ち込んだ気分の「わたし」のことを指しているのかと思った。そんなことを思うなんて、そのときの私自身が落ち込んでいたのかもしれない。しかしそうではなく、落ち込んだ気分から気持ちを切り替え、「今日のわたしにはきれいなしっぽがある」と言い切る(あえて)「わたし」を指しているのだと気付いた。落ち込んだ今日のわたしが、立ち直った今日のわたしに変わる夜明けの瞬間を歌っているのかもしれないなと思った。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『オーエス オーエス』(1986)に収録)
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