2007年05月12日

はじめての出前コンサート in 盛岡

連休の旅行も兼ねて、盛岡に「出前コンサート」に行きました。

GWの盛岡は桜色に若葉色。やはらかにあをめる北上の柳色! 北上川に中津川。岩手公園。ゆっくりしていけば?といった雰囲気が、控えめにそこかしこに漂っている気がする。いいとこだなぁ。コンサートが始まるまで、そんなことを思いながら散策していた。

会場は岩手県公会堂。創建80年というレトロな造りの会場にぴっちり並んだ小さな座席は、昭和の日本人の体型に合わせて作られたんだろうか。ぎゅうぎゅうとお尻を詰め込みながら、みんなアッコちゃんの登場を待つ。

そして、開演のアナウンスからやや間があってアッコちゃんが出てきた。Gパンだ! 丈が短めのきれいめデニムに、半袖パフスリーブのカットソー。Aラインのシルエットで、スモックタイプのかぶるやつ。青?地に朱赤の花柄。足元は黒いサンダル。普段着ふうの格好が「出前」っぽい。

1曲目は「BAKABON」でスタート。ものすごくさりげない歌い出し。

アルバム『LOVE LIFE』(1991)に収録されてるこの曲の、両足で大地を踏みしめるみたいな力強い明るさも好きだけど、このコンサートの肩の力が抜けた「これでいいのだ」もアリだな。何より今日のこの街のこの天気に合っている。お城の跡の公園でお花見をしていた人たちののんびりした笑顔を思い出しながら、ふわふわしたいい気分になった。

●「ひとりぼっちはやめた
●「DAVID

てなことを思っていると、この2曲があとに続く。ああ、やっぱり盛岡をイメージした選曲なのかな。裏表のない、素直でやさしい曲。私がこの街に持った印象そのままだ。

●「大寒町

「こういう北の町にくると、こういう歌が歌いたくなります」とアッコちゃん。ファンの人からのメールで、しばらく歌ってなくて忘れ去っていたこの曲の存在を思い出したとか。

●「さようなら
●「いいこ いいこ

歌詞に「桜」の入った2曲。「いいこ いいこ」、CDで聞いてるときは、特にお気に入りというわけでもなかったのに、今回のコンサートではかなり印象に残っている。CDで聞くより説得力のある感じで歌の中身が伝わってきたというか。ピアノ伴奏の迫力のせい? それとも、客席に向かって惜しみなく注がれる、アッコちゃんの120%笑顔のせいか。

●「ニットキャップマン

盛岡にはこういうもの悲しい明るさが似合う。この曲の乾いたさびしさは、いつ聞いてもいいな。

●「グッドモーニング

この歌詞、このメロディーのぎゅっとした苦々しさは何!? 絶対くるりのカバーだろうなーと思ったら、やはりそうでした。アッコちゃんが演奏すると、苦いけど青くなく、乾いているトコロがさすがです。

●「ラーメンたべたい

力強い「ラーメン」。スープが黒そう。焦がししょうゆが入ってそう。京都にそういうラーメンがあるんです。

●「雷が鳴る前に

ガツンとしたラーメンのあとに、箸休めの一曲。イントロのピアノのメロディーの清涼感が好き。

●「誰がために

ごーんと重い曲。でも、アッコちゃんのピアノの強さが美しくて、お気に入りの曲。生で聞けてうれしいな。岩手公会堂の「南部魂の入ったピアノ」(アッコちゃん談)との相性も素晴らしい。

●「Night Train Home
●「SUPER FOLK SONG
●「ごはんができたよ

グランドピアノ「南部魂」号とアッコちゃんのパワーがさく裂。フォルテッシモ、フォルテッシモ、フォルテッシモ!おおーまだいきますか!!みたいな力強いタッチに魅せられました。「SUPER FOLK SONG」のあとの拍手、すごかった。私も息するの忘れてました。

アンコールは予想通り、次↓の2曲。でも絶対聞きたかった外せない2曲。満足!

●「Green Tea Farm
●「ひとつだけ

実はこれまで「出前コンサート」に行ったことなかった私。「さとがえるコンサート」などの全国ツアーが、あらかじめセレクトされた曲+その土地によってセレクトされた数曲で構成されるのに対して、「出前」は、その街にその季節に合った曲がオーダーメードで選ばれてるような気がしました。そして今回のコンサート、客席に向かって微笑みかけるアッコちゃんの笑顔が、見ていてどんどん大きくなるのがわかった。客席の笑顔に呼応してたんだと思う。私の隣の席の男性も、曲がすすむごとに拍手の本気度が上がっていってたもん。いいコンサートだった。出前コンサート追っかけ旅行、またやりたいな。
posted by かなへ at 19:48| Comment(51) | TrackBack(0) | ヤノアキコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月04日

「Little Girl, Giant Heart」

アルバム『WELCOME BACK』(1989)のいちばん最後に収録されているこの曲。

新年一発目から「最後の曲」のレビューというのもどうなんだろうと思いつつ、でも、いつ聴いてもどうしようもなく鼓舞されてしまうこの曲を景気づけに選びました。この曲のおかげで『WELCOME BACK』というアルバムを聴き終えたあとはいつも、いい映画を観終えて劇場を出るときのような気分になる。晴れやかさと、何とも形容しがたい、あの胸がいっぱいになる感じ。

インディアンの闘いの踊り…ではないけれど、本能的に奮い立たせられるリズムをもつイントロ、強めの風を受けてたなびく天女の羽衣のように、気持ちよく伸びるアッコちゃんの歌声。バンと勢いよく開いた扉の向こうには、さあ次の幕。何が待っているのやら。難しいことも含まれているかも。けれど切り抜けられないことなどはない、はずだ。

***

更新の頻度がすっかり落ちてしまったこのブログを辛抱強く見にきてくださっている皆様、ほんとうにありがとうございます。こんな感じではありますが、今年も続けていきたいと思っております。どうぞ今年もよろしくお願いします。

(作曲:矢野顕子、窪田晴男 アルバム『WELCOME BACK』(1989)に収録)
posted by かなへ at 17:10| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽曲レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年12月17日

行ってきました東京

あっという間に1週間以上が経ちました。12月8日金曜日午後7時、矢野顕子×上原ひろみピアノセッション@昭和女子大学人見記念講堂。関西からはせ参じました。行った甲斐大あり! 素敵なライブでした。

すでにいろいろな方が色んなところで感想を書いてらっしゃいますが、遅ればせながら私もレポートさせていただきます。

●2人の登場後、まずは上原さんのソロが4曲。

ちなみに、このライブでは2人の登場前と退場後、ステージにスクリーンが下りてきて、ニューヨークで撮ったインタビューを上映。私はそこで上原ひろみさんという人がどんな声でどんな喋り方をする人か初めて知りました。素直で性格よさそう〜。ひろみちゃんって呼んでもいいですか?という感じ。しかし、その可愛い女の子がピアノを弾いてるときにはとてつもない怪物に変貌するので、彼女の演奏中、私は硬直してしまいました。ガツン系のピアノ。黒い炎やらビーム光線やら、そよ風やら、鍵盤のすき間から色んなものをバンバン出しまくりながら弾く人です。自分のソロ演奏を終えると、「ひろみちゃん」の笑顔に戻った上原さんは「ボスの前座を務めさせてい
ただきました」…ってどんな前座やねん! こんなの先に演奏されて、アッコちゃんは大丈夫なのか!? と心配になったのでした。

上原さんは、アッコちゃんの代表作からは「ひとりぼっちはやめた」を演奏。キラキラ細やかな音。この曲の歌詞の冒頭に出てくる「雨があがった朝の光」を連想させる。あと、この歌詞の「楽しい気持ちを分けてあげる」というフレーズをとても丁寧な感じに演奏してくれて、ありがとう…と思いました。

そして、いよいよボス、ではなくて、アッコちゃんの出番。自らをカキフライ、上原さんを肉じゃがにたとえて観客を沸かせつつ、「テーブルに色んなおかずがあるほうがごはんがおいしいように、このライブでは色んな種類のピアノ演奏が聴けますよ」といったことを話しつつ演奏に入る。

●「中央線
上で引用した言葉の通りバラエティーを出すために、アッコちゃんは上原さんの濃い演奏にあえて淡い感じの曲をぶつけたのだろうか。風が運んできたみたいにパラン、パランとしたピアノ。でも少し弱い。

●「ばらの花
こちらもデリケートな感じ。でも、アッコちゃんの歌声、よく伸びている。

●「きよしちゃん
忌野清志郎さんのことを歌った新曲。私は今年さとがえるに行かなかったので(私のバカ…猛烈に悔やみ中)、初めて聞きました。この曲、キヨシローさんの曲のくせが少しだけ入ってる気がする(「いい歌だね」のところ)。惜しみなく力を込めて歌うアッコちゃん。かっこいい歌い方!

●「ごはんができたよ
あったまったところでこの曲。最高! 待ってましたこういうの! お客さんの拍手もどんどん大きくなっておりました。

いよいよここからが本番、二人のデュエット。

●「Children in Summer
私は今回のライブでこの曲が一番好きでした。上原さんの編曲で、太陽の日差しはギラギラと強く、ひまわりの花やお昼過ぎの短い影の色は、濃く鮮やかに。ひまわりはゴッホの油絵ばりにうねっていて、ちっとも牧歌的じゃない「なつやすみのこども」でしたが、それがよかった。

●「あんたがたアフロ
とアッコちゃんが呼んでいた曲。「あんたがたどこさ」と「アフロブルー」(誰の歌だっけ? 何とかモンゴメリー? MCで話題になっていたけど、忘れちゃいました…)という曲ををミックスした曲。

●「Living with You
ディズニー映画のような編曲にびっくり! 悪い魔法が解けて、王子様とお姫様が見つめあう場面とかで流れそうな、バラ色の甘さ。ベタなんだけどなかなか感動的な演奏で、これも好きでした。お風呂あがりのようにほこほこした。

●「Very Early
●「はこ
アッコちゃんはボーカルのみ。大人の夜…。

●「Deja vu
上原さんの曲をアッコちゃんが編曲。アッコちゃんはピアノとスキャットで。

●「ラーメンたべたい
アッコちゃんのライブで何度となく演奏されてきた人気のこの曲、でも、今までに聴いたことのない変わったアレンジ。この曲のラーメンはちぢれ麺? こんがらがった複雑な女心も連想させる。ついて行くのに必死という感じで夢中で聴きました。夢中で聴きすぎて細部の記憶が抜けております。

アンコール
●「そこのアイロンに告ぐ
生で聴けて感激。デッドヒートを繰り広げる2台の黒いスポーツカー。

●「Green Tea Farm
上原さんの曲にアッコちゃんがふるさとの母親(だと思うけど、違ってたらごめんなさい。歌詞を初めて聴いたので、記憶が曖昧)を思う歌。春の終わりの夜、遠くの人を思う感じ、繰り返される「ありがとう」という言葉の美しさ。静かであたたかい曲。本当はもっとたくさん、何なら一晩中2人の曲を聴いていたかったけど、いい締め方だったと思う。

この企画、来年も開催されるのかしら? 全国を巡ってほしいなぁ。
posted by かなへ at 21:48| Comment(0) | TrackBack(0) | ヤノアキコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年10月26日

行くわよ東京

随分ご無沙汰してしまっています。とはいえ、このブログは死んではおりませんので、悪しからず。

さて、12月8日開催のアッコちゃんと上原ひろみさんのコンサート、ネットにて予約しました。明日支払を済ませたいと思ってます。この日は何としても会社を休まなければ!!
posted by かなへ at 22:26| Comment(8) | TrackBack(0) | ヤノアキコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年09月02日

『いままでのやのあきこ』聴いてます

ずいぶん久しぶりの記事更新。というのも、ここしばらく音楽を聴いても頭(もしくは体)に入ってこず…。

でも、8月末に、アッコちゃんの音楽活動30周年を記念して出た『いままでのやのあきこ』は買いました。今も聴いてます。

これまでのアルバム・シングル盤の曲からアッコちゃんがセレクトした約30曲がCD2枚に収録+DVD1枚という構成。DVDはライブの様子が収録されているのかなーと思ったら違うのですね。プロモーションクリップがメインでした。

超主観による感想を以下に。

disc1の曲はどれも好き。でも、強いて挙げるなら、私の好きなアルバム『いろはにこんぺいとう』と『ただいま。』から2曲ずつ選ばれていたのが嬉しかった。「海と少年」もいいなぁ。「また会おね」も大好きな曲だけど、『グッド・イーブニング・トウキョウ』より『ごはんができたよ』バージョンのほうが私は好き…。今までのアルバムからまんべんなく選曲するためには仕方なかったのかな?

disc2は、「BAKABON」で始まってるところがいい! 『LOVE LIFE』も好きなアルバムです。「PRAYER」「All The Bones Are White」…この2曲は収録されて当然よね!と思っちゃう私。「あたしンち」が入ってるのも嬉しい。シングルでしか出てないのがずっと不満だったので。「N. Y. C.」は個人的にはあまり好きではないのですが、アッコちゃんにとっては思い入れのある曲なんだろうなと思う。固まってしまわないで、今までと違うことに果敢に挑戦する姿勢はカッコいい。

DVDは、プロモーションクリップって、歌い手の人が「演技」のようなものをしていて、それが照れくさくて仕方ない(例:「二人のハーモニー」)。そんな私は屈折しているのでしょうか? でも、DVDにある「ひとつだけ」は、なんと言うか、ピアノの音が、かまどで炊いたごはんみたい。お米が一粒一粒ピッと立っていて、口に入れるとふわーっといい香りがしてきそうな。

選曲は、全体のバランスを見てされたんでしょうか、バランスよくまとまっているけど、少々地味な気もしました。アッコちゃんの持ついい意味でのアクの強さが若干抑えられているような。「ト・キ・メ・キ」は? 「へこりぷたあ」や「クマ」は? 「ROSE GARDEN」は? 「GREENFIELDS」は? 「愛がなくちゃね」は? 『オーエス オーエス』や『GRANOLA』からは1曲も出ずですかい!? 今までに出たベスト盤に入ってる曲とはかぶらないように…といった配慮もあるのかもですね。

ファンの皆さんは、どんな風に聴かれたのでしょう?  

posted by かなへ at 21:24| Comment(10) | TrackBack(1) | ヤノアキコラム | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月16日

夏の読書〜『優しい音楽』

図書館の本の返却期限が昨日だったので、あわてて返しにいく。で、また新しいのを借りてくる。

瀬尾まいこさんの本が読みたくて物色する。彼女は中学の国語の先生をやりながら作家活動をしているそうだ。私の大好きな友人と下の名前が同じで、おまけにその友人も中学校教員をやっている…そんな、作品とは何の関係もないところで以前から親しみを持っていた。「いつかそのうち」と先延ばしにして、代表作を読んだことがなかったので、今度こそと思い、サ行の作家の棚へ。しかし、彼女の代表作は、残念ながら出払っていた。残っていたのは1冊。『優しい音楽』。短編集である。

この本が出た頃、題名と装丁に惹かれて本屋で立ち読みしたので、表題作は読んでしまっていた。でも、好きな作品なので借りた。ラストシーンを知りつつの再読。女の子の語りの部分に、かすかに伏線が張ってあったんだ…気付かなかったなあ。物語を読み終えたあと、この題名を振り返ると、じわーっと幸せな気持ちになるところが何度読んでもいいなと思う。

『優しい音楽』という題名は、この作品のクライマックスシーンのことを指しているのだと思う。けれど、それだけじゃなく、物語全体の流れにもうまく合っている気がする。最初はちぐはぐなやりとりをしている付き合い初めの2人が、互いを知る過程で瑣末な違い(食事に関することが多い)に驚き合い、ものの見方が増えたと面白がり、やがてはそれぞれを最も心地いい存在と認識する。徐々に息が合って、きれいな協和音となめらかなメロディーを持つ「二人のハーモニー」が奏でられるまでのようすが描かれている。それを支える二人の会話の運び方も好き。馬鹿馬鹿しすぎず、あまり色気はないけれど、サバサバしてるとか冷めているというわけでもなく。このへんにも親しみを感じてしまうのかも。



posted by かなへ at 16:58| Comment(2) | TrackBack(0) | 不器用貧乏暇なし日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月30日

「All The Bones Are White」

題名のbonesにwhite、「だきよせた私の肩に風が止まる」の歌詞、乾燥した冬の冷たさを連想する。白い熱いホットミルクがほしくなる。

しかし何よりこの曲が冬を感じさせるのは、白い息まじりできこえてきそうな冒頭の「会いたいな」のフレーズ。おお何という声を出すのだ、アッコちゃん。

街路樹も枯れ、通りにはまだだれもいない暗がりの午前5時台の街。まだ生命のないひっそりとしたところに、突如現れた人の気配にどきりとする。この歌の出だしに、そんな印象を受けた。冷たい空気の中、生命の気配は白い息という形で現れる。冬の空の下で見える、生きてるものが持つ温度の色。骨といっしょ。すべての生き物に共通の色。そしてすぐ消える。次々とまた一つ現れる。そこに生命がある限りだ。その点で、しろい息は、ひとりぼっちのとき取り止めもなく浮かぶ思い出と似ている。

「独り」ということを痛いくらいに(それこそ冬の外気みたいに)感じさせられる歌。この歌に満ちている「白」のイメージと結びついて、ますますそう思う。「白」って孤独が似合う色と思う。

雪の白、病院のシーツの白、人骨の白。ホットミルクの白、湯気の白、凍えた手のひらに吹きかける息の白。

孤独だが温かい歌。白という色が、死のイメージを内包しながらも、清潔で、時に温かい色だというのと似ているかもしれない。独りということが、冷たくて痛いのと同時に、なぜか平安をもたらすのと似ているかもしれない。独りをへた後には、ほんの少しの温かさが、心の底に宿るのと似ているかもしれない。人の体温と同じくらいの温かさだと言っておこう。

(作詞・作曲:矢野顕子 アルバム『OUI OUI』(1997)に収録)
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2006年07月23日

「ふりむけばカエル」

その夜、さえない気分を紛らわそうと、私はネットサーフィンに興じていた。しかし、とりたてて面白い情報にも出逢えず、溜め息まじりにパソコンの電源を切り、ふと携帯電話を見ると、一件の着信履歴が。ネットをしている間、カバンの中で鳴っていたらしい。それは蛙からであった。

アッコちゃんの「ふりむけばカエル」は、聴きながらあるいは口ずさみながら、つい歌詞を頭の中で映像化してしまう。イケてない自分に失望しがっかりうなだれていると、「どうにかなるさ」と背後から声が。ずいぶん下のほうから聞こえてくるその声。不審に思いながら振り返ると、足下にはとぼけた表情の小さなカエルが(私の中では、そのカエルは本物のアマガエルではなく、糸井重里さんがアッコちゃんのコンサートグッズのために描いた「さとがえる」だったりする)。がくっと脱力させられる、ゆる〜い情景。この曲のメロディーが持つハキハキはじけるような感じとはどこかミスマッチで、つい笑わされてしまうのだ。

何とはなしにゆーうつで、うっかり踏み誤るとクヨクヨ自分をかわいそうがってしまいそうになる瞬間、違う方向から声をかけてくれるカエルが背後にいてくれるときは幸運だ。小さなカエルの声を聞き逃さずに済んだときは幸運だ。

着歴の残ったケイタイを取り上げ、私は蛙に電話した。相変わらずバカな彼、それにバカな私。笑っているうちに夜は更けていった。そう、カエルに言われちゃ、どうしようもない。ほんと、笑って明日を迎えるしかないのだ。

(作詞:糸井重里 作曲:矢野顕子 アルバム『GRANOLA』(1987)に収録)
posted by かなへ at 14:55| Comment(4) | TrackBack(0) | 楽曲レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月19日

「"It's For You"」

長年アッコちゃんファンをやっていると、「矢野顕子のどの曲が好き?」とよく訊かれるし、私も訊く。

この質問に答えるのが難しいのは、お気に入りを絞り込めないからだけではない。「有名どころから言っとくか」とか、相手によっては、その人が知っていそうな曲から選ぼうと計算してしまうせいもあると思う。あと、「この場合、インストで答えるのは不可だろうか」「歌詞のある曲を言っておいたほうが、歌詞の内容を介して私の価値観も伝わりやすく、私という人間も知ってもらえるかも」とか。余計なスケベ心が働きすぎるのだ。

その結果、いつも選にもれてしまうのがこの曲。ホントは大大好きなのに。

個人的には「ビーナス誕生」というイメージを持っている。水の中、小さな泡が次々と立ちのぼり、上からは光がたっぷり注いでいる。グラスに注がれたばかりのシャンパンみたいにキラキラ透明な感じ。そして、繊細なだけじゃ終わらないダイナミズム。溢れそう、こぼれそう、すっぽり飲み込まれ、いらないものを、洗い流してくれそうだ。

1年間の休業後に出たアルバム『WELCOME BACK』(1989)の第1曲目に収録されたこの曲。まっさらで力強いこの曲をリアルタイムで聴いたファンの人たちは、彼女の復帰をどんな気持ちで受け止めたのだろうか。

(作曲:Pat Metheny, Lyle Mays アルバム『WELCOME BACK』(1989)に収録)
posted by かなへ at 22:05| Comment(4) | TrackBack(0) | 楽曲レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年07月17日

「I Sing」

慌しい日々。音楽を聴きたいなーと思うことも忘れ、しばらく過ごしていた。で、一区切りついた頃、繰り返し頭の中を巡ったのがこの曲だった。

ほかほかと温かい感じが心の中からわきあがるメロディー。落ち込み、疲れてしまっている人を励ますため私は歌うといった内容の歌詞。全体的に明るく前向きな雰囲気をたたえているが、その中に、どこにでもいる悩める人たちの悲哀がチラリと覗いている。その人たちに「Forget about…」「Don't worry about…」「My men, my women」と、呼びかけるような形で歌詞が書かれている。

自らも猫好きで、誰にも縛られない自由さをたたえたアッコちゃんではあるが、この曲はどことなく犬っぽい。落ち込んでいる人のそばに寄って、疑いのない瞳で人懐っこく笑いかけているような。その中に、自分の目の前の悲しい顔をした人を助けたいというまっすぐな意志。

自分のできることや自分の作るもので誰かを元気づけたいという気持ちが爽やかに力強く歌われていて、とても眩しい。この歌に強く惹かれる私であるが、私は励まされたいのだろうか、それとも励ましたいのだろうか。

(作詞:矢野顕子 作曲:坂本龍一 アルバム『ただいま。』(1981)に収録)
posted by かなへ at 19:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 楽曲レビュー | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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